良い見積りは、お客に嘘をついても仲間だけには嘘を付かない見積りだと思う

良い見積りは、お客に嘘をついても仲間だけには嘘を付かない見積りだと思う

こんにちは、らいかです。突然ですが「良い見積り条件」って何だと思いますか?

こんな問い、なかなか普段の業務ではしませんよね。わたしも始めて見積りをする時に先輩から色々と教わったものです。
意外ではないかもしれませんが、SIerってシステム開発の見積り経験が実は豊富なんですよ。しかも精度が高くて定量的な根拠がお客から厳しく求められるような苦しいやつばっかりです。そんな見積りを行ってきたわたしが肌で感じて実践している「良い見積り」について頑張ってわかりやすく伝えようと思います。

はじめに

Web制作の現場でもシステム開発の現場でもフリーランスの方でも見積りって行いますよね?1人で全部やるっていう方はあまり意識をしないのですが、チームで見積もりする時に見積りって何個作りますか?

「いやいや、見積り何個も作るわけねーよ」って方にこそ、ぜひとも読んで欲しい仲間のための見積りについての話が今日、お話してみたいなと考えていることになります。

良い見積りに必要な2つの見積り

この記事の答えになるのですが、良い見積りには2つの見積りが必要だとわたしは考えています。

  • お客に対して要件の実現に必要な工数とその請求金額の根拠を提示する”御見積り書”
  • 社内の決済権を持つ経営層や管理層に向けて純粋な工数の根拠を提示する”見積根拠資料”

お客に対して提示する見積りは、いまこの記事を読んで頂いている方が思うような見積りのイメージです。○○ページのデザイン、マークアップ、バックエンド開発、確認、納品など工程ごとに工数とその請求金額をわかりやすくまとめたもの。

一方、社内に向けた見積りは言葉を言い換えると分かりやすいのですが「見積根拠資料」とわたしは呼んでいます。その呼び方の通り、その案件ではどのような工程、ページ、そして機能があってそれぞれに何時間かかるのかを定量的に示す根拠資料です。
この詳細度が上がれば見積り精度を上げることが出来るようになり、実際の制作工程に入った際のブレ幅を小さく抑えることができるようになります。

高精度な見積りは、プロジェクト自体の安定性や進行全体の基盤を作ることに繋がります。いわゆる炎上案件では精度の低い見積りが引き金となって、プロジェクト始動時のスキル不足や要員不足を引き起こします。
一番パワーが必要になるプロジェクト発足時にスキル不足・人不足では進むものも進まず、プロジェクトは泥沼化します。

見積りは、プロジェクトの命運を握る超重要工程であると考えています。

見積り精度を上げることについて

「見積りの精度を上げる」と聞いて間違えないで頂きたいのは、見積りの精度はお客の予算内に綺麗に着地させるのではなく、社内のリソース(メンバーの質や量)を無駄なく管理するために想定できるリスクが洗い出されている見積りであるということです。リスクが洗い出されているのであれば、制作期間中の大幅な工数増にも耐えることが出来ますし、更に良いこととしてお客に対して「こういう追加要望を出されるとXXX円かかりますよ」と事前に仕様変更や設計変更に対するリスクの予防線を張りやすくなります。
この予防線が張りやすくなるというのは実際に作ってみないとピンとこないところなのでイメージし辛いのですが、色々なリスクを検討していく中で「この工程で仕様変更が入ると、この作業に影響が出そうだな。」というのがすごく見えるようになります。

お客への見積りは嘘を付いてもいい

「嘘」というと若干語弊があるのですが、

  • リスク係数
  • 販売管理費
  • 利益(販管費に含めることもあり)
  • お客の予算に合わせた工数の数字調整(主に減らすこと)

などが見積りの請求金額に含まれていると考えると、「嘘」というより必要なモノとして伝わってくれるかと思います。
お客に対して付いていい嘘は、この4つ限定で、これ以外の嘘は本当に問題で「偽装」や「虚偽の数字」という言葉に置き換えると危険度が伝わりますよね?

見積りを行う時、よくあるのが

らいか
見積りの結果、この要件ですと110万円がご請求金額となります
お客
いやぁ~、予算が厳しいからね~。もうちょっとなんとかならないかなぁ~。

こんな時に4つ目の嘘が登場しますよね?予算に合わせて本来もう少し工数がかかるところをお客の財布事情に合わせて案件を獲得するためにディスカウント(値引き)する。価格交渉では当然起こる会話ですよね。これで値引きをした時にちゃんと見積りをしていないとたとえ案件を獲得できても誰も幸せになれない可能性があります。

値引きで純利益がいくら減るか答えることができますか?

この問いに答えられない見積りは間違いなくダメな見積りです。

目に見える工数を減らしてお客の機嫌を取って案件を獲得することは価格交渉を行う立場の人にとっては成果ですが、実際に制作を行うクリエイターやエンジニアを騙して勝ち取った案件は損害でしかありません。
だってそうでしょう、本来は300時間かけて制作を行うものが予算に合わせるために250時間に削減される。しかし要求される成果物のレベルや納期に変更はなく、予定通り300時間で制作を完遂しても「赤字だ!怠けてる!」と批難されてしまう。そんな状況では良い物を作ったクリエイターもエンジニアも報われません。また赤字案件となったら会社にとっても最悪で結局誰も嬉しくありません。
こんなダメダメな状況にならないためにも、2つ目の「社内へ向けた見積根拠資料」を作成する必要があると考えます。

見積根拠資料で制作者を守る

前述のとおり、お客にしか見えない数字だけで請求金額を変えてしまうと誰も幸せになれない案件が生まれます。見積り工数が小さく相応の人数しかアサインできない。でも案件の難易度は高く納期も厳しい。そんな状態で本当に良い物が作れる訳ありません。
ただ、見積根拠資料を作ったからといって制作者が守れるということでもありません。決済権を持つ役職にある方や経営層の理解と状況の把握がないと意味を成しません。

見積りは”原価を積み上げる”

良い見積りは、お客に嘘をついても仲間だけには嘘を付かない見積りだと思う

「当たり前じゃん。今さら何言ってんの?」って思われる方は正常なのですが、原価の積み上げで見積りを作っていない人を今まで何度も見てきました。
その人は、目に見えている「お客の予算」が気になりすぎて数字に圧力を掛けて小さくしがちになります。そして圧縮に圧縮を重ねた数字がお客の予算内に収まっていることを見て安心します。

見積りとしては、数字だけ見れば変な小細工や値引きをせずにお客の予算内に収まっているので100点満点の見積りに見えなくもないですが、こんな見積りを行っていけば、赤字が続きいつか破綻してしまいます。

ここで言う「原価」とは

この記事で使う”原価”という言葉は、以下の条件を満たすものを指しています。

  • 必要な作業に対しての所要時間を純粋に算出したもの
  • お客の予算を全く意識していないもの
  • 作業上のリスク等を全く意識していないもの
  • 社内の管理費(営業さんの利益、ビル代、電気代などなど)を全く意識していないもの

余計な不純物を一切含まない、純粋な作業時間のことを原価と呼んでいます。

見積根拠資料は社内の理解を得て始めて意味を持つ

見積りに対して理解のある会社なら良いですが、わたしの会社の様に理解のない会社だと苦労します。
どうでもいい苦労話は置いといて…。見積根拠資料はほんとうの意味での案件に掛かる時間を示す資料です。純粋に作業を洗い出して積み上げた時間は絶対にかかります。でも、往々にして追加作業や細かな修正が発生するのでもうちょっとかかります・・・。

この数字こそ、決済権を持つ方や経営層に伝えて置かなければ後々プロジェクトを走り切った時に「赤字だ!」だの「怠慢だ!」だの責められることになります。
わたしは、見積り額を値引きすることに対しては仕方がないと思いますし、交渉や今後の付き合いを考えると値引きしてでも長く付き合うことが中長期で考えると会社のためになると思っています。しかし、経営層に対して「本当はこれくらいかかる」を伝えておけば、最終的な数字だけを見てうるさく言われることも減るでしょう。わたしの経験ではほとんど無くなりました。

当然、価格交渉を行う担当者にも原価はしっかりと理解してもらいます。見積りを行った自分自身が価格交渉できるのであれば問題ないですが、価格交渉は営業担当が行うシーンなどがあるので関係各位には漏れなく原価を共有します。

値切るくらいなら次に回せ

少しだけ余談ではありますが、どうしても予算と案件の折り合いが付かない時があります。そんな時はSTEP論での開発を進言し、リスクや負担を分散させることもチームリーダ、チームマネージャーに求められることなんじゃないでしょうか?

まとめ

  • 見積りを行う際は、お客に提出する御見積り書と、社内に向けた見積根拠資料の2つを用意する。
  • それぞれの立場や欲しい情報にあったレベルの資料を使い分けることで、認識齟齬や現状把握を定量的に行ってもらえる。
  • 社内の経営層も巻き込んで現状を定量的に伝えることは、チームを守ることに繋がる。
らいか
わたしの拙い経験ですが、しっかりと考えをアウトプットしてみると色々と経験してきたなぁと懐かしい気持ちになります。当然最初は失敗だらけで怒られることが多かったですが。この記事で書いたように社外・社内の資料の使い分けは本当に効果がありました。お客の予算に合わせために「がんばる」ことは必要ですが、無理なことが分かってるところを下げるのではなく、下げれる数字と下げれない数字を理解することが重要で、下げれる数字を巧みに使って交渉することが本当に重要ですよね。
良い見積りは、お客に嘘をついても仲間だけには嘘を付かない見積りだと思う

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ABOUTこの記事をかいた人

工業高等専門学校を卒業後、NTTグループのSI企業に就職。数々の炎上案件を鎮火するために日本各地を5年間転々とする。2015年に一般ユーザ向けのWebシステム開発案件のチームリーダとして業務に従事し、改めて”Webのものづくりの楽しさ”に気付きWeb制作会社に転職。Web制作やアクセス解析を使ったオウンドメディアの運用改善などを行っていく中で、もっとユーザー目線でWebをただ制作するだけではなく企画や運用まで幅広い領域で仕事がしたいと感じるようになり、Webディレクターのキャリアを目指す。日本中のビジネスホテルに詳しく、犬や猫よりも鳥派。